TL497を用いた昇圧回路

ノートパソコンを長時間運用したい場合に使おうと思い、12Vの鉛シールドバッテリーから昇圧して電源を供給するためにステップアップコンバーターを作成しました。
TL497はスイッチングレギュレーター用のICで、コイルの逆起電力を利用して昇圧/降圧を行うというユニークなものです。コイルを使用するのでチャージポンプを用いたステップアップコンバーターに比べると、大型になりますが、、外部トランジスタを追加することで数A程度までの用途に使えます。
ターゲットは松下Let's noteで、ACアダプタの規格は16V2.5Aとなっていますが、調べたところ13.5V以上で外部電源に切り替わるようなので、14Vとしました。
初めに昇圧回路のみ試作して使ってみたのですが、バッテリーの電圧が下がってきた場合にトランジスタがONになったままになるようで、トランジスタが焼損しました。危うくファミレスで異臭騒ぎになるところでした。(笑)
この対策として保護回路を追加することにしました。トランジスタの温度異常が最低限わかればよいでしょう。
出力の停止はTL497のINHIBIT端子をHiにすることで行えます。

使用した部品

特殊な部品は使っていません。回路図を見ればわかると思います。
コイルが一番入手性が悪いと思いますが、秋葉なら鈴商やラジデパあたりで手に入ると思います。
ヒートシンクと金属性のケースを用いて方熱を行なうようにしました。

回路

circuit テップアップコンバーターの回路は、TL497のデータシートに記載されている電流ブーストを用いたステップアップコンバーターの回路そのまんまです。
各パーツの定数の算出方法も割愛します。ポイントとしては、時定数を決めるより、先に入手可能なLやCfをある程度決めておき、計算する方が便利です。
トランジスタが一定温度以上になった場合に、出力を停止する回路と、11.3V以下になった場合点灯するバッテリーLEDをPIC12F629でを用いて作成しました。
温度センサーはS-8100Bを使用しました。電源が78L05で作っているので精度は今一ですが十分でしょう。
バッテリー電圧の検出には手持ちのツェナーダイオード(8.2V)があったのでこれを利用しました。これだと、PICの内部リッファレンス電圧を利用したコンパレータでは、比較電圧が上限ぎりぎりなので、9V位のツェナーダイオードを使用したほうがベターです。
実際には温度や電源電圧で多少のバラツキがあるので、調整する必要がありました。

アルゴリズム

プログラムは、バッテリー電圧と温度計の出力電圧を順番に比較して、LEDの点灯や出力停止を行う無限ループです。クロックは内部オシレーター(4MHz)を使用しました。
電圧の監視にはPICの持っているコンパレーターの機能を使用しています。
バッテリー電圧はVRCON=0xafとするとリッファレンス電圧が3.125V(=11.3-8.2V)となりちょうど良いです。11.3Vを選んだのは、11.0V程度までTL497が出力を保てるからです。
温度に関しては、パッケージ表面の温度を測ることになりますし、トランジスタとの熱結合や熱容量によって閾値を調整する必要があります。差し当たり高めに設定しておき、正常稼働時の最大温度(ノートPCのバッテリーを充電中は3Aくらい流れます。)のセンサーの電圧を計っておき、それを元に設定しました。
実際には1.40V弱で良いのですが、あまり小刻みには設定できません。温度計の出力は電源電圧5Vの時、60.6℃で1.25Vですので、VRCON=0x80とすればよいことがわかります。
閾値と、入力チャネルを選択したあと、1ms待たせていますが既存のコードを流用しただけです。本来は10us待たせれば十分だそうです。
試作してみた結果、電圧は結構変動があるようで11.5V程度からバッテリーLEDが点灯してしまうため、5回チェックして、5回とも設定値以下だった場合に点灯させるように変更しました。(これでもたまに点灯してしまいますが、目安と言うことで)

完成品

DSCF0970.jpg DSCF0968.jpg トランジスタと温度センサをいかに熱結合させるかがポイントでしょうか。
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