CE9AにFD3Sのリヤブレーキを取りつける

CE9Aのブレーキは、オリジナルではかなり貧弱な部類で、車重が軽いにしても、スポーツカーというカテゴリーとしては不十分と言わざるを得ません。特に私の車はフロントをレグナム用(EC5W)に変更しているため、ブレーキバランスが悪く、またリアが熱だれしやすい傾向があると感じていました。
リアブレーキを使いきれていない状況については、GPSロガーでもコーナリングよりも減速Gが少ない事が数値的にも出ており、改善を行なう事にしました。

ブレーキの選定については、CE9Aはインドラムではないため、エボ4以降のブレーキの流用にはナックルやアーム類の交換や構造変更を伴います。
また、ディスクがベンチレーテッドでないため、ディスクのみを大きくするような改造は適当なディスクが見つかりませんでした。どうせなら、熱だれ防止のためディスクはベンチレーテッドにしてしまいたいところです。
検討の結果、FD3S(FC3S後期も同様)のブレーキが比較的流用が容易との結論に至りました。

中古を入手してフィッティングを検討したところ、スラスト方向はほぼ同じで、オリジナルより僅かに外周寄りにキャリパーを配置すれば、ディスクはFD3Sのものを使用して付くことがわかりましたが、ボルトとキャリパーの干渉を避けるため、比較的複雑な形状のブラケットを作成する必要がありました。
制作手順について以下に説明します。

tapping

キャリパーサポートにタップを切る

ナックル側にボルトの頭が出ているとローターが厚くなっているために干渉して具合が悪いため、オリジナルのキャリパーサポート側にネジを切っておきます。こうすることで、外側に突起せずに内側からネジ止めすることができるようになります。元々10mmの穴があけてあるので、M12のタップを切りました。ボルトはオリジナルの強度区分7以上であれば何でもよいと思いますが、ケチっても大差ないので、P1.5強度区分10.9としています。
遮熱板は返しの部分に切れ込みを入れて、写真のように開いておきます。これで大きさ的にもちょうど良くなります。切り口は錆びやすいので、塗装しておきます。

採寸と穴あけ

採寸と穴あけ

ブラケットは結構太めのA7075(超々ジュラルミン)角棒から削りだしました。構造的にもかなり強度があると思いますが、恐らくここまで頑丈につくる必要はないと思われます。
強度の計算に自信が無かったので、念のためです。材料をアルミにするなら、断続的に熱が入る部分なので溶接加工は避けたほうがよいでしょう。
穴の間隔は、ブレーキローターとパッドの位置関係を見ながら決めなければなりませんが、隠れてしまう部分で採寸が難しいので、一旦M8程度の穴を開けてから微調整をした後に本番のサイズで穴あけをしました。薄板で型紙を作ってしまうのも良いかもしれません。手間ですが、ここはビシッと決めたいところです。

切削加工

切削加工

加工後

加工後

取りつけ

取りつけ

次に、オリジナルのキャリパーサポートが収まる部分を削り込みます。切削量はブラケット表面とオリジナルのキャリパーのステーが面一になるようにしました。深さは約10.1mmです。
この削り量で、キャリパーとローターのスラスト方向の奥行きを調整することになるわけですが、後述のようにキャリパーをぴったり重ね合わせてもローターの内側がキャリパーに僅かに干渉する状況でしたので、最も薄くなるよう面一にするしかありませんでした。

キャリパーベースの加工

キャリパーベースの加工

約1mm切削後

約1mm切削後

FDキャリパー側は、1mm程度厚みを薄くしないと、ローターの裏側と干渉する(相対的にローターが奥に入りすぎる)ため、キャリパーベースを約1mm程薄く面研し直しました。
取りつけボルトのかかり量が少なくなってしまうため、切削量は必要最小限にしておきます。ローターを新品にしたときに干渉するかもしれませんが、それはまたその時対処することにします。

FDのサイドブレーキステー

FDのサイドブレーキステー

作成したステー

作成したステー

次にサイドブレーキの対応を行います。見てのとおり、ワイヤー先端の引っかける部分はほぼオリジナルと同じ構造をしています。
先端からワイヤーガイドの固定位置までの長さが異なるので、2枚目の写真のようなステーを作ってに付け替えます。
こちらは9mm程度の鉄板を溶接加工して作りました。住宅用の80角座金というのが素材としておあつらえ向けです。

ブレーキローター
左がFD用、右がエボ用

ローターは4つ穴加工と、ハブ穴径の拡張をしておきます。三菱のリアのブレーキシャリパーのセンター穴はハブ穴と同じではなく、ハブ側に一回り大きな突起がありそこにはまる構造なのでかなり大きな穴が開いています。ローターを咥えられる旋盤は持っていないので、手作業で広げてあります。
精度がいまいちですが、ハブボルトでセンターはおおむね出ますし、実際はセンターが多少ずれていてもブレーキパッドの交換時などの初期なじみで若干ジャダーが出る程度の話で大した問題はないでしょう。

逃げ加工

逃げ加工

干渉状況の確認

干渉状況の確認

これで完成かと思いきや、組んでみるとピストンシリンダーがブラケットと干渉することが判明。ピストンとバンジョーの回り止めの干渉を解消するための手直しが必要でした。
初めから中央部分は大きく削り込んでおいても良かった気もしますが、折角ここまで作ったのでなので最小限の切削量としておきました。

完成

完成

これで容量は十分確保できたと思いますが、ブレーキバランスはパッドの選択に依っているのでどこまで使い物になるか。
きっちりバランスを取るにはやはり調整式のプロポーショナルバルブが欲しいところですね。