ランエボのLSDをオーバーホール

ジャッキアップして車輪を回転させると、逆方向に回転するので、磨耗してきたのかと思い分解してみましたが、実際は0.1mmも減っていませんでした。純正はほとんど与圧が掛かっていないようなので、こんなものなのかな。
carrier 作業はデフケースを固定しないとやり辛いので、作業用のキャリアを作成した。
力が掛かる作業が幾つかあるのである程度の剛性が必要です。本来はSSTがあるみたいですが高そうなので却下。
ちなみに、この程度の作りでは10kgm程度しかトルクを掛けられないので、コンパニオンフランジのロックナットを緩めることは出来ませんでした。オイルシールの交換やドライブピニオンAssyの分解を予定しているのであれば、車載状態で緩めておくのが良いと思います。
バックラッシュ測定 一応、バックラッシュと歯当たりを確認してみる。
まずはバックラッシュの確認。ダイヤルゲージをセットし、写真のようにスパナを掛けて指先で前後に押してやると、「カツン」と当たる感じがあるので、その幅を測定する。単にドライブギアを手で動かしても良いが、スパナを使った方がわかり易いです。
コンパニオンフランジを完全に固定しないと、デジタルのダイヤルゲージでは計測しづらい。前後に動かしながら、アナログゲージで移動量を読み取るのが簡単です。
歯当たり測定 歯当たり測定 歯当たり測定 歯当たりは、本来は特殊工具を使ってトルクを掛けた状態でギアを回転させるとあるが、コンパニオンフランジを押さえつけた状態で、ドライブギアをスパナで回転させる方法でも測定できる。スパナを掛けかえる時に逆方向に回してしまうと、歯当たり跡が不鮮明になるので注意が必要です。
ペイントマーカーを使っても測定できるが、今回は光明丹を使ってみた。量が多すぎるので買うのを躊躇していたが、確かに見やすい。デフオイルだと粘度が高すぎるので、CRC556とかマシン油で溶いて使う方が良いと思います。筆などで塗らないといけないのが少々面倒ですが、ペイントマーカーだと付着した塗料は拭いただけでは取れないので、何度も測定するような場面では光明丹の方が楽そうですね。
MB241903 分解前にバックラッシュや歯当たりを測定しても、組みなおすと若干変わったりします。分解前はバックラッシュも若干大きめで歯あたりパターンも遠すぎだったので、右側に寄せようと思いましたが、パーツを取ってみたら、既に最大限寄せてある状態。組みなおすと基準値に収まっていたので、今回スペーサー交換は見送りました。
サイドベアリングスペーサーは、2.60mmから3.20mmまで0.05刻みで13枚がセットになっており、適当なものを選択して使用するようになっています。
LSD取り外し LSDをデフケースから取り出す際はこじった位では外れなかったので、中心にバーを通して両側を支えておき、デフケースをたたいて外した。
LSD取り外し LSD本体は分解する際どのように組まれていたかわからなくならないように注意する。フリクションプレートとフリクションディスクの厚みをマイクロメーターで測定して記録する。
本来は定盤の上で表面の歪みも測定するが、当たり面が均一だったので省略。定盤持ってないし。
フリクションディスクには1.65mmと1.75mmが用意されているので、歪みや変磨耗がある場合には交換、あるいは片側のトータルで0.1mm近く減っている場合は1枚厚いものに交換する。
LSD取り外し このまま組み立てるのもつまらないので、左右それぞれ1枚を0.1mm厚いものに交換した。イニシャルは上がるので少しレスポンスは良くなるはず。 組む際万が一わからなくなった場合は写真のように線が入っているプレッシャーリングが右側に来ていればOK。
LSD組み込み リングギアは取り付ける前に古いネジ止め剤をタップでさらって除去しておく。 LSDをデフケースに組み込む際は、サイドスペーサーを後から打ち込むとマニュアルにはあるが、ベアリングレースの方が突起していて無理っぽいので、すべて組んだ状態で徐々に入れていくほうが無難。入れるときも相当硬いので、LSDのケースと、サイドスペーサーを交互に叩いて常にデフケースと平行になるように入れていく。鉄の棒を使うと痛むので、真鍮の棒があった方が良い。
自作工具 古いドライブシャフトや等速ジョイントのケースがあれば、写真のような工具を作成してイニシャルトルクを測定することができます。
整備書通りに組んだ場合は、ほとんど抵抗無く(1-2kgm)回ると思います。逆にここで硬くて回らないようなら、異物を噛み込んでいるか、フリクションディスク/プレートの合計が厚すぎると考えられます。
イニシャルトルクを上たい場合は、フリクションディスク/プレートを厚めのものに変更する、プレートの組み方を変える、シムを入れる(純正の設定なし)などの方法があります。スポーツ走行中心の場合は10kgm程度に設定しても良いと思います。
この例では、フロント左側のドライブシャフトを分解して利用しています。(フロントもリアもスプラインの形状は一緒)
スピンナハンドルで回せるようにするため、ソケットレンチのコマを溶接してあります。
carrier イニシャルトルクをあげたい場合の手法として、与圧を高くする方法がある。元々ダートラ仕様の車両についていたLSDを分解してみたところ、フリクションディスクを減らし、代わりにコーンプレートを増して、実現しているものがあったので紹介しておく。この方法だとコーンプレート以外(実際には厚みの調整のために0.3mmのシムが入っていたが)は純正を使用するので非常に安価にチューニングが可能である。結果的に差動トルクが発生し始めてからロックするまでの時間を短くすることが出来ます。
LSDが1Wayであるにもかかわらず、大きなトルクがかかってない状態では2Way的な挙動をするところも面白いかもしれません。反面、トルクがかかっていない状態でもロック状態であるためアクセルを抜いている状態でも常にロックしている状態で、常にアンダー傾向となるため本来のLSDの動作とは異質のものである。また、摺動面積が減るため絶対容量が少なくなるので、滑った場合には磨耗は通常に比べ激しいはずである。
逆に、コーンプレートを減らし、フリクションディスクを増やすことで、タイムラグは若干増えるもののロック率の立ち上がりを急峻にする方法もあります。
最近はイニシャルトルクを上げずにレスポンスを向上させたLSDが開発されているので、それらに比べると癖があるのでしょうが、ドライバーが慣れていればコストパフォーマンスは良いのではないかと思います。